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2021年に爆発的な成長を見せたNFTの取引活動、2022年には安定化へ

※本ブログ記事は、「State of Web3 Report」のプレビューです。

非代替性トークン(NFT: Non-Fungible Tokens)は、過去2年間でWeb3において最もダイナミックで目立った存在となってきました。ブロックチェーンをベースとしたデジタルアイテムであるNFTは、ユニット単位で交換が可能な従来の暗号資産とは異なり、一意かつ代替不可能なユニットで構成されています。Ethereumブロックチェーン上に構築される多くのNFTプロジェクトと同様に、NFTはデータをブロックチェーンに保存し、そのデータは画像や動画、音声といったメディアを含むファイルや、場合によっては、物理的なオブジェクト(物体)にも関連付けすることができます。通常NFTは、トークンと関連付けられているデータやメディア、あるいはオブジェクトの所有権の証明に利用され、専門市場で売買されています。

NFTは2021年に爆発的な成長を見せましたが、2022年は現在のところ横ばいの状況となっています。以下に、2021年当初からNFT市場がどのように成長・縮小してきたかを見ていきます。

2021年以降、NFT取引は拡大しているが、一貫性を欠く状況に

2021年の始めから、NFTの取引量は大幅に増加してきましたが、この成長にも変化が見られるようになりました。NFTの取引は毎月のように増減しており、これまでのところ2022年にNFTマーケットプレイスに送られた資産価値は、1月は2021年の成長の勢いを保ってきましたが、2月に入って下降に転じ、4月中旬にはまた回復基調になっています。

全体で見ると、コレクターは2022年に入って5月1日時点で370億ドル以上をNFTマーケットプレイスに送金しており、2021年の送金総額400億ドルを上回るペースとなっています。しかし、2021年の夏以降、NFT取引の成長は断続的なものとなり、2つの突発的な急増を除き、その取引活動は、ほぼ横ばいの状況となっています。昨年8月末の急増要因は「Mutant Ape Yacht Club」コレクションのリリース、2022年1月下旬から2月初旬の急増要因はNFTマーケットプレイス「LooksRare」の立ち上げによるものと考えられます。

これらの急増後、2月中旬からNFTの取引活動は大幅に落ち込み、2月13日週に39億ドルだった取引総額は、3月13日週には9億6,400万ドルにまで下落し、2021年8月1日週以来の低い水準となりました。しかし、先ごろ立ち上がった「Bored Ape Yacht Club」のメタバースプロジェクトもあり、NFT市場は4月中旬には回復基調に転じ、現在の週間取引総額は本年初め頃の水準に近づきつつあります。

このような取引高の増減があるものの、NFTの売り手や買い手の数は増加し続けています。

NFTの売買に関わる固有のアドレスは、2020年第4四半期は62万7,000件でしたが、2022年第1四半期には95万件に増加しています。全体としてNFTのアクティブな売り手と買い手の総数は、2020年第2四半期から四半期毎に増加し続けています。2022年第2四半期の5月1日時点で、49万1,000件のアドレスがNFTの取引に関与し、NFTの市場参加者の四半期毎の拡大を維持する原動力となっています。

NFTマーケットプレイス「OpenSea」でのアクティブなNFTコレクションの数(=特定の週に取引があるコレクションの数)も2021年3月以降増加を続け、現在では4,000件を超えるほどになっています。

NFTの利用者

著名なNFTプラットフォームに送られるウェブトラフィックを分析してみると、資産クラスが世界中のユーザーを引き付けていることが分かります。

中央アジアおよび南アジアが市場をリードし、これに北米、西欧が続いています。確かに一部出遅れている地域もありますが、2021年の始め以降、ウェブトラフィックの40%以上を占める地域が存在しないという事実は、暗号通貨全体と同様にNFTが世界中で利用者を獲得したことを示唆しています。

また、NFTの取引規模を分析すると、どのような人物が投資しコレクションしているかを推測することができます。

NFT取引のほとんどは、1万ドル相当未満の暗号資産によるリテールサイズ(個人規模)の取引となっています。NFTコレクター規模の取引(1万ドル~10万ドル)が送金全体に占める割合は、2021年1月から9月までの間に大幅に増加しましたが、それ以降は横ばいとなっています。これは差し当たって、リテールサイズの取引を行う新たなNFT投資家の増加が、より大きな金額を扱うNFT投資家の増加と、同じようなペースであることを示唆しています。

しかし、取引数ではなく取引高(金額)に目を向けると、NFTコレクターがその大部分を占めていることが分かります。また機関投資家の動きも活発で、非常に大規模な購入が行われた週では、取引の大部分を占めるようになっています。例えば、2021年10月31日週は、機関投資家による取引が全取引量の73%を占めており、そのほとんどが「Mutant Ape Yacht Club」コレクションにおいて、複数のNFTを購入したことによるものです。その後の週も機関投資家規模の大きな取引が続き、以降、機関投資家による取引が全取引の33%を占めるようになっています。

しかし、NFT市場全体を俯瞰すると、機関投資家規模の取引が一貫して成長を続けているとは言えません。

2021年11月下旬から2022年2月中旬にかけて、機関投資家のNFTの購入は毎週のように拡大を続け、1月30日週に2,739件まで急増した取引数は、2月13日週には1,889件となりました。その後、機関投資家のNFT取引は急速な減少を見せ、2月20日週にはわずか473件にまで落ち込んでいます。しかし2022年4月17日の時点では、NFTの取引数は2021年冬のレベルにまで戻っています。機関投資家の取引が減少した期間は、NFTへの全体的な関心が低下しているように見える時期とほぼ一致しています。


クレジット:Google Trends

Chainalysisは、機関投資家レベルかそれ以外かに関わらず、「NFT」という単語のGoogle検索結果とNFTの取引活動について、統計的な関係があると述べているわけではありません。しかし、NFTが2021年後半のように広く一般からの関心を取り戻せているのか、さらにそれが取引の増加や著名なNFTコレクションの価格上昇につながっているかを観察することは、興味深いことであると考えています。

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