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暗号資産による寄付がトルコ・シリア大地震の犠牲者の迅速な救済に貢献

An aid worker surveys earthquake damage

2 月 6 日にトルコとシリアで発生した壊滅的な地震による死者は、現時点で 4 万 7,000 名に上り、世界の多くの人々が無力感を抱いています。このような惨状に加え、両国の政治的緊張によって物流が困難となり、いずれの国の犠牲者も援助を受けることが困難な状況に陥っています。このような規模の人道的危機が発生すると、人々が救援活動に寄付したいと望んでも、どこに寄付したらよいのか分からなくなることが少なくありません。最大の関心事は、どうすれば資金を本当に必要な人にできるだけ早く届けることができるかということです。

このような時勢において、暗号資産は人々への迅速な支援に向け、重要な役割を果たしてきました。例えば、何百万ドルもの暗号資産がウクライナ支援のため提供されています。暗号資産の利用者は、ロシアによるウクライナ侵攻開始直後の 2022 年 3 月 28 日時点で、既に 5,600 万ドル相当以上の暗号資産をウクライナ政府が用意したアドレスに寄付しているほか、デジタル通貨を受け入れる慈善団体への寄付も行っています。トルコ・シリア大地震の犠牲者救済に対しても、暗号資産が同様の役割を果たせる可能性があります。

Chainalysisでは、現在までに約 590 万ドルの寄付が行われたと推定しており、これは暗号資産がいかに国境を超えて資金を送るための実用的な手段であるかということを示しています。資金を受け取った団体には、トルコ内務省地震人道支援キャンペーン、トルコ赤十字社、セーブ・ザ・チルドレン、Project HOPEなどが含まれています。さらに、暗号資産ビジネスを運営するBinance、Tether、Bitfinex、OKXおよびKuCoinも、地震の犠牲者の支援に向け 900 万ドル以上の資金提供を約束しています。Binanceは、これらの支援の一環として、地震で被害にあったトルコの市民に、BNBで 100 ドルをエアドロップする予定だと発表しています。

 

他の業界も同様で、複数の組織が、現地の人道的取り組みに対する支援を約束しています。トルコ出身のChobani社のCEOは、トルコ慈善活動基金に 100 万ドルの提供を確約し、さらに最大 100 万ドルをマッチングギフトとして上乗せして寄付すると約束しています。IKEA Foundationは、国境なき医師団に 1,000 万ユーロの提供を約束しています。Amazonは、UNICEFやセーブ・ザ・チルドレンといった団体に、現金で 50 万ドルを送金しています。世界中の政府もまた支援を強化しています。米国際開発庁 (USAID) は 8,500 万ドルの提供を約束し、カナダは 1,000 万カナダドル (740 万米ドル) を送金し、さらに追加で 1,000 万カナダドルを上乗せして寄付することに合意しています。

暗号資産による寄付を成功させ、大きな影響を与えるための方法とは

このような規模の緊急事態が発生した場合、無意識のうちに暗号資産を犯罪者に送ってしまうリスクがあります。このため、寄付を行う前に十分な注意を払うことが重要となります。例えば、米国財務省外国資産管理室 (OFAC) が制裁対象に指定したエンティティや、詐欺的な寄付活動に関連した暗号資産アドレスを宣伝する詐欺師を避けることが必要です。過去には、テロ資金供与組織が慈善団体を装って違法性を隠蔽するようなケースも見られました。Chainalysisは、地震災害に関連した詐欺と疑われる 18 件の寄付用アドレスを特定しましたが、現在のところ同アドレスは、502 ドルの暗号資産しか受け取っていません。

詐欺師への寄付を避けるため、米連邦取引委員会 (FTC) は、次のような対応を推奨しています。

  • 慈善団体や金銭を要求している人物を調査します。団体や個人の名前と、「レビュー (review)」、「苦情 (complaint)」、「詐欺 (scam)」などの単語を合わせてオンライン検索を行います。
  • 暗号資産のウォレットアドレスをオンライン検索し、送金しようとしているアドレスが実在するものであることを確認します。

最も支援を必要としているシリアに対する制裁措置は、様々な課題を生んでいます。しかし 2 月 9 日、OFACはSyria General Licnese 23 (GL 23、シリアに対する一般許可 23) を発行し、Syrian Santions Regulations(シリアに対する制裁規制)の例外として、地震の救援に関連する全ての取引を 180 日間許可するという迅速な対応を取りました。この措置により、企業や金融機関、さらに暗号資産取引所にとって、制裁違反を恐れずにシリアを支援できる機会が増えますが、同時に制裁対象と分かっているエンティティへの寄付は絶対に避けなければなりません。

昨日、OFACは制裁措置を遵守しながら、シリアの地震の犠牲者に支援を提供するためにはどうすればよいかといった質問に応えて、Guidance on Authorized Transactions Related to Earthquake Relief Efforts in Syria(シリア地震救援活動に関わる承認取引ガイダンス)を発表しました。OFACでは、GL 23 がデジタル決済を承認していることを確認しています。「地震救援のために制裁対象以外のシリア人に資金を送るなど、GL 23 に許可された活動については、米国市民 (U.S. persons) は(銀行経由など)特定の方法によって資金を送ることを求められません」

危機的な状況下においての暗号資産寄付の独自のメリット

暗号資産の優位性の 1 つは、従来の金融手段は実際に動き出すまでに時間を要するのに対し、迅速に支援の機会を提供できる点です。特にシリアのような制裁対象国では、現金による支援金提供のために適切なチャネルを設定しようとすると、タイムリーで不可欠な支援に遅れが生じる可能性があります。さらに、銀行が世界中への送金処理に数営業日(さらに適切な口座の設定に数週間)かかるような場合でも、暗号資産による送金なら数分で処理が完了します。

利用者にとって、寄付に暗号資産を使うもう 1 つの傑出した優位点は、銀行のようにクロスボーダー送金(海外向仕向送金)に多額の手数料を支払う必要がないという点です。暗号資産で資金を寄付することは、非営利団体の収益源の多様化にも役立ち、従来の資金調達手段への依存度軽減にも繋がります。